「よし、荷造りは大丈夫」


私は空っぽになった自分の部屋を眺める。


16年間お世話になった家だ。やっぱりちょっと寂しい。


私は部屋を出て、リビングに向かう。


「お父さん、売れるものあった?」


「まあ、ちょっとはな。」


もともとそんなにものもないので、荷物をまとめるのに時間はかからなかった。


「…ごめんな、こんなことになって。」


落ち込むお父さんの顔を見ると、怒る気なんかになれない。


優しい人なんだよね、お父さんは。


「そんなことないよ!頑張って返そうね、借金!」


私がお父さんに笑いかけると、お父さんも弱々しく笑い返してくれた。


ダメな父親だっていう人もいるかもしれない。


でもきっと私をここまで育てるのに、お父さんは人一倍努力したと思う。辛い思いだって、たくさんしたんじゃないかな。


そんなお父さんに恩返しの気持ちも込めて、明日からはバリバリ働かなきゃ。


「…これ、寮の住所だ。手紙、書いてくれるか??」


お父さんからメモを受け取る。


「うん、もちろん」


お父さんは寮付きの工場で働けることが決まった。


少しでも借金返済の助けになればと、このアパートも解約することになった。