拓人くんは私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれて、神宮寺邸まで送ってくれた。


「また辛くなったら言って。俺が朔弥を殴っといてやるよ」


そう言って私に連絡先をくれた。


「ありがとう、でもこのこと朔弥には言わないでね。私、諦めたわけじゃないから」


「…うん。もちろん」


笑顔で手を振って、優しい優しい拓人くんは帰って行った。


「ありがとう!」


その背中に叫んで、私は裏門からそっとお屋敷に入る。


「ひな!」


カナさんが私に気付き、香織や悠人さん、百合さんも来てくれた。


「えっと…ただいま」


「おかえり!」


カナさんに抱きつかれ、私は少しだけよろめく。


「…あのね、私、朔弥様に会いたい。今は無理でも、絶対、いつか。だから…」


みんな、私の話を聞いてくれる。優しい目で、聞いてくれる。


拓人くんの、言う通りだ。


「だから、辛くなったら、慰めてもらってもいいですか??」


辛いときはたくさん泣こう。たくさん頼ろう。大好きな人たちに。


「もちろん!」


嬉し涙が流せる、その時まで。