「…ライバルなのに、なんでそんなに優しくしてくれるの?」 「正々堂々って言ったでしょ。ほら、拭いて」 袖で涙をそっと拭われて、彼女の優しさに心が軽くなる。 「ありがとう橘さん、私行く」 「ていうかそろそろ橘さんってやめたら?香織でいいよ」 「うんっ…香織!」 「早く行きなよひな」 私は最後の涙をこすって、階段を駆け下りる。 朔弥に会えるのは、これが最後かもしれない。大袈裟なんかじゃない。きっとあの人なら、やりかねない。 だから、大好きな人の顔を、声を、優しさを、この身に焼き付けよう。