「根本さん、どういうことですか!?ていうかなんなんですかあの人!」


階段を下りる根本さんの後ろを慌ててついていく。


「あの人、ではなく朔弥様ですよ。」


くそう…あんな失礼な奴に様付けしなきゃいけないなんて、本当腹立つ!!


「…もともとこの屋敷にメイドはこれ以上必要ないんです。人手は十分足りてますし。だけれども、お坊っちゃまが我が儘を言って、追加で募集したんです」


「え…じゃあ私は何をすれば…」


そこでようやく根本さんが立ち止まる。


「あなたは、基本的にお坊っちゃまの命令に従ってください。お坊っちゃまの身の回りの手助けをするんです。余裕があれば、このお屋敷のこともやってください」


私は、絶望的な気持ちになる。…あいつにつきっきりで仕事しなきゃいけないなんて…


「…やめますか?この仕事」


根本さんは感情の読めない顔でそう言ってきた。


私は目を閉じて、お父さんの笑顔を思い浮かべる。


絶対、また2人で暮らすんだ。


「…やめません。絶対に」


根本さんは少し驚いたような顔をしてから、ふっと微笑んだ。


「いい顔です。さ、まずはこの屋敷の使用人全員に挨拶をしますよ。それからお坊っちゃまのところに行ってください」


「はいっ!」


私は自分を奮い立たせるように、大きな声で返事をした。