2人がフレンチトーストを切り、口に入れる。


そして、しばらくの沈黙。


「…うん、美味しいよ!」


「…」


「不器用で悪かったわね!」


笑顔が引きつってるお父さんとは逆に、朔弥は無表情でフレンチトーストを食べ続けている。


「…あの、朔弥様?無理しなくても…お腹壊されても困りますし…」


「別に、甘ければなんでもいい」


え、それ褒めてないよね?


それでも自分が作ったものを好きな人が食べてくれるのって。


「…なにニヤけてんだよ」


こんなに嬉しいなんて、知らなかった。


グスッ、と鼻をすする音が聞こえたと思ったら、朔弥の向かいに座っているお父さんが、泣いていた。


「えっ!?ちょ、お父さん!?」


「うっ…グス…なつかしいなあと思って」


「もう、鼻水出てるよ〜」


私は自分の目が熱くなっていることを感じた。


「はちみつ、もっとかけます?」


「っ…ありがとうございます…」


場違いな朔弥の提案とお父さんとのやりとりに、なんだかおかしくなって私は笑ってしまった。


涙が、でるほど。


本当に、幸せだ、私。


この時間が、永遠に続けばいいのに。