「なんで…なんで、私の気持ちを無かったことにするの?」


朔弥の気持ちを強制するつもりはない。


私のこと嫌いなら、嫌いって言えばいい。


でも…


「嫌いって言われるより、なかったことにされるのが一番辛いよ…!」


どうしてあなたはそんなに傷ついた目をするの?


知りたい。あなたの心が。あなたが今まで何に悲しんで、何に喜んだのか。


「…わかんねぇよ。」


私の口を塞いでいた手が、朔弥の前髪をぐしゃりと潰す。


「好き、とか。そういうの、信じられねぇし。信じても、いつか裏切られる。だから、今までだってずっと拒絶してきた。」


朔弥の辛そうな声。聞きたくないけど、知りたい。


あなたのことなら、綺麗なところも汚いところも、全部。


「…女の好意なんて、煩わしいだけだ。俺に向けられるそういう目を見るたびに、赤くなる顔を見るたびにうんざりして、全てが面倒くさくなる。でも」


でも。


「お前の赤くなった顔は、好きだった。いやだと思わなかった。もっと見たいって思った。」


「…私の、だけ?」


「…だから、メイドもやめて欲しくない。」


好きって言われたわけじゃない。


それは、もしかしたら女として見てないからって意味かもしれない。


でも、私今すごい嬉しい。