「きっと、そよにも自我が芽生えてきたんだよ。」


「自我…?」


「うん。
そよの世界は、僕達と病院くらいしかなかったから。
狭すぎて…深すぎたんだ。」


「……そう…。」


「それが学校に行くことで、知らない人に囲まれる楽しさを知った。
…受動的だったそよが、自ら行きたいって意思を持ち始めて能動的になったんだ。」



そういうパパの声色は、なんだか嬉しそうで。


ママとは反対に明るかった。



「ねー、そよ。」


「……!?」



唐突に、パパが私の方に声をかけた。


え、バレてた…?


目は瞑ってたし……。



「おいで、そよも夕飯食べよう。」



パパがダイニングから、リビングのソファに来ると、にこにこしながら私を抱き上げる。


ダイニングのテーブルには、ママのカレーとサラダが乗っていた。



「聞いてたの…。」


「うん。」



聞かれたくなかったのか、ママが気まずそうに私から顔を逸らした。