想世架のことを忘れるつもりもないけど、今しばらく…俺はこっちにいるよ。

待たせてばかりで悪いけど、もう少しだけ待っててくれないか…?


そう思って、空を仰ぎ見た時。
ぐいぐいとあやちゃんに腕を引かれた。



「ん?どうかした?」


「あの人…迷子みたい。」



あやちゃんの指さす方には、真っ白いワンピースを着てきょろきょろしてる女の子。

白いレースのショールを羽織っていて…どこか儚げな様子。


その後ろ姿に、俺は…見覚えがある。



「……想世架……。」


「せんせー?」


「あ、いや。ごめん。」



とりあえず声をかけてみよう。
ここの病院は、1回迷うと不便なことに迷子になりやすい。



「どうかしましたか?」



くるん、とワンピースを翻して俺を見る。


ワンピースから伸びる華奢な腕。
傷ひとつない真っ白な肌。

真っ黒な大きな瞳に、ぷっくりとした愛らしい唇。



「良かった…。
ここの病院の方ですか?
実は、お見舞いに来たんですけど…迷子になってしまって…。」


「何科ですか?」


「あ、整形外科です。」


「分かりました。
ご案内しますね。」


「ありがとうございます!」



嬉しそうにそう微笑む彼女。
……そっくりだ。


あいつに、そっくり……。