「……。」



誰もいなくなった、静かなリビング。
ただ何もせず、時間が過ぎていく。

ふと…手にした日記に目を向ける。
今の俺は、日記を読む勇気がなかった。
…あいつが、どんな思いでいたのか。



「俺に渡してどうすんだよ…。」



俺が読んでも、いいのか…?
あいつの心の奥底にあるものを、俺が勝手に覗いたりしても…いいのか?



「……よし。」



ゆっくり、ゆっくりと。
震える手で…日記のページをめくった。



最初の方は…ちょうど、あいつがこっちに来たばかりのことが書かれていた。



________________________


4月10日

日本に帰ってきて、数日が経った。
私は学校に行かなくちゃ行けないらしい。
行きたくない。

パパのお友達が理事をする学校に挨拶に行くことが決まった。
嫌だ、怖い。
学校なんて行きたくない、怖い。

こんなことなら、ずっとアメリカにいれば良かった。
アメリカのホームスクールで、家で勉強してる方がマシだったのに…。



4月28日

学校に行き始めて、分かったことがある。
思っていたよりも…私は、受け入れてもらえたみたいだ。
いじめなんかないし、むしろみんな助けてくれる。
朝行けば、おはようって笑ってくれる。
縁寿ちゃんと紗綾ちゃんと食べるお弁当、美味しいなぁ……。
そういえば、隣の席の男の子。
冷泉くんはどうして、クラスの子と仲良くしないんだろう。
女の子達から人気ある、って縁寿ちゃんも言ってたのに……。
不思議な人だな…。