あれから、どれだけ経ったのか。
気がつくと…想世架の一周忌を迎えていた。



「……千暁くん。」



家で課題をしていた俺の元に突然訪ねてきたのは、想世架のおじさん。
会うのは、この間の一周忌以来だ。


俺に何か用事なんて…珍しいな、と思いつつリビングで対面した。



「……やっと、片付けが終わったんだ。」


「……そう、ですか…。」


「妻が、一周忌を過ぎたら…整理するとずっと決めていたんだよ。
…それで、これを君に。」



そう言いながら、おじさんが差し出したのは1冊の日記帳。


…想世架がつけていた、日記帳。



「あの子の日記帳…。
これを君に渡すように、書かれていたんだよ。」


「え…?」



よく見ると、表紙に小さな付箋が貼ってある。
見覚えのある女の子らしい小さなこの字は、間違いなく想世架字で。


“万が一の時はちあきにわたすこと”


少しだけ、震えた文字で書かれていたのを見ると…余計に辛くなる。



「私はもちろん…妻だって、中身は見ていない。
これは、あの子から君へのものだから…。」


「…あり、がとう…ございます…。」



受け取ったそれは、今まで手にしてきたどんな医学書よりも…重く感じた。


俺が受け取ったのを見ると、おじさんは優しく笑ってくれる。


そうして、満足そうにして…帰って行った。