「見てみろ。」


「……?」


「ここから見えるだろ?
色んな人が、色んな生き方してるんだ。」


「色んな、生き方…?」


「そう。
あんなふうに笑ってる人だって、本当は色々な悩みを抱え生きてるかもしれない。」



そう言いながら、千暁は歩いてる人に目を向けるから。
私もそれに倣って、目を向けた。



「悩みがない人間なんていない、って俺は思ってる。
俺だって、悩みはある。
でも、それは想世架が聞いてくれる。
だから俺は、救われる。」


「千暁…。」


「自分から、ちょっと目を離してみて辺りを見回してみろ。
色々な生き方がある。」



色々な、生き方。
千暁が…見てきた、生き方。


私の知らない、世界。



「…そう、だね。
でもまだ…私には、1人で探すのは難しいから……一緒に、探してくれる?」


「当たり前だ。
これから、二人で新しい発見を見つけていけばいい。
お前の知らない世界を、俺の知らない世界を。
互いに見せ合っていこう。…な?」


「……うん…!」



微笑んでくれる千暁のおでこに、初めて…自分からキスを落とした。



「…千暁のこと、ずっと、好き。」


「俺は愛してる。」



いつの間にか降ってきた雪の中で。


熱を帯びた唇を重ねた。