ずっと、不安だった。
優しくて、かっこよくて…誰よりも素敵な千暁に、私は相応しくないんじゃないかって。


千暁のことを気になってる女の子が多いのは、学校に通っている時から知ってたから。



だから…いつかは、嫌いになってしまうかもしれない。

汚い女は嫌い、って…離れてしまうかもしれない。


心のどこかで、そんな小さな不安が見え隠れしていた。



「俺は、想世架しか見えてない。
…今までもこれからも。」


「……千暁っ……。」



抱きしめてくれる千暁の背中に腕を回す。
自分から、腕を回すのは…初めてかもしれない。


汚い腕を見られてもいい、と思えたから。



「ずっと、ずっと…怖かった…!
いつかは…千暁に、汚いって…気持ちが悪い、って言われるんじゃないかって…!
汚い私は、千暁にふさわしくないって…!」


「バカ。
俺こそお前にふさわしい男なのか、いつも不安で悩んでるわ。
純粋なお前に、俺のいる世界は汚いかもしれないって。
でも…俺はお前しか綺麗に見えない男だから。
お前が血まみれになったって、灰かぶり姫になったって…想世架は綺麗だって言いづけるし、愛し続けるよ。」



「ち、あき……。
…う…わぁぁあん…!」




子どもみたいに、声を上げて泣いていたら。


ふっ…と笑った千暁が、あの紅葉狩りの日のように私を高く抱き上げた。