「妻にも、そういう気持ちがあれば…良かったのですが……。」


「大丈夫、なんですか?」


「それが…思ってる以上に、思いつめていましてね。
家のことにも手がつかない状態で…。」



私が差し出したお茶に、お父さんの悲しそうな顔が映る。
金木犀の花びらがひらり…と水面を揺れた。


お母さん…大丈夫なのかな。
確か、妹さんもいたよね……?



「いつか廃人になってしまわないか、不安もあるんです。
妹もいますし……。」


「お父さんは…大丈夫なんですか…?」


「私は……。
妻のあんな姿を見たら、しっかりしなきゃと思ってしまいますから…。」



寂しそうな、辛そうな顔をする直央くんのお父さん。
そうだよね…。
大事な子どもが亡くなったのに、平気な顔していられるはずがないよね……。



「そう、ですか……。
あんまり気張らないようにしないでくださいね。」


「ありがとうございます。
…想世架さんは、可憐で儚げに見えるのに…強いのですね。」



可憐で儚げ……?
しかも、私が強い…?
全然そんなことないのに。