「息子がお世話になりました。」


「いえ……。
私こそ、直央さんには沢山お世話になりましたから…。」



あれから、数日。
私の元には、直央くんのお父さんが来ていた。
話によると、お母さんはまだ直央くんを亡くした事実を受け入れられてないみたい。
無理もないよ…。



「お恥ずかしながら、私は…仕事であいつの元へ頻繁に行けなかったんですよ。
それでも…貴女の話は聞いていました。」


「私のこと…ですか?」


「はい。
可愛い子がいる、と。」


「……。」



恥ずかしい…。
直央くん、お父さんにまで話してたんだ…。
まったく…どこまでも、素直なんだから。



「それだけ、直央にとったら…貴女の存在は大きかったのでしょう。」


「私にとっても、大きな存在でした。
…だから、正直。
まだ実感が湧いていません。
またあの病室に行けば、笑って出迎えてくれると思っている自分がいます。」



本当だよ。
まだ、全然実感が湧かない。
だから、悲しみにくれる気持ちもあんまり…ない。