「寒くねぇか?」


「…うん。」



そう言いながらも、想世架の手は膝掛けの下に隠されていて。


くしゅん、と恥ずかしそうに…くしゃみをするから着ていた上着を肩にかけた。



「…ありがとう…。」


「…あぁ。」



春になれば桜が咲き乱れるこの丘も、今は紅葉が彩を飾っている。


その大木の袂に腰を下ろして、想世架を見上げると…想世架はただ、大木を見つめていた。



「想世架?」


「……良いなぁ…。」


「……?」



なにが良いんだ…?


大木に触れながら、想世架は…ポツリポツリと言葉を落とした。



「春は桜…夏は緑葉。
秋は紅葉…って、生まれ変われるの…いいなぁ。」


「……。」


「私も生まれ変われたら…いいのに。」


「…っ…。」



悲しげに…儚げに。


いつも以上に、憂いを帯びた横顔を見ていられなくて…俺は、想世架を抱きしめた。