「……片桐紗綾。」



俺が想世架の前で好きな人だと、口に出すと。


想世架はいつの日にか見せた、あの悲しそうな顔を一瞬だけした。


だけどすぐに、いつものように花がふわりと揺れるような微笑みを見せる。


協力するね、とだけ言うと、あの夕焼けの日と同じ背中を見せて…視聴覚室を出て行った。



「あれ、冷泉くん。
想世架は?一緒じゃないの?」


「…?あぁ、あいつの方が先に出てったぞ。」



宇都宮に言われて、教室を見回すが…あいつの姿がない。


どこに行ったんだ…?


気になったものの、すぐに帰ってくるだろうと思い、昼飯に手をつける。



「……はぁ…。」



今日、想世架に話したことは…半分本当で半分嘘だ。


確かに、杏とは別れた。


でも…好きなのは、片桐紗綾じゃない。


……お前だよ、想世架。