俺が初めて葬式に出たのは、成人してまだ間もない時だった。
母さんの妹、つまりは俺の叔母さんに当たる人が事故で亡くなったと連絡が入って、電話越しで母さんが凄く泣いていたのを覚えている。

大手会社の跡取りとして生まれた俺は、息の詰まるような生活に耐えられず、会社の会長を務めている祖母に我儘を言って寮のある高校に行かせてもらい、家から逃げるように東京の田舎の方でずっと過ごしてきた。
高校を卒業してからは我儘を許したお返しにと親の選んだ大学に進んで、経営学を学んだ。

しかし、やっぱり自分と合っている気がしなくて、途中で辞めてしまった。期待に応えられないその後ろめたさで、ずっと家に帰ることが出来ていなかった。
成人式を終えて、久しぶりに連絡しようと思っていた時に叔母さんの訃報が知らされたのだった。