「翠ちゃんはいつから泣き虫になったの?」

「緑斗のせいでしょ!」

「はは、いつも俺のせいにするよね」

「私がいつ……っ!」

まだ言い返してる途中なのに緑斗は私の頬っぺたにチュッと軽いキスをして、心臓がまた速くなった。

館内は涼しいはずなのに2℃くらい暑くなったように、顔が火照る。


「い、今のは反則っていうかダメだと思う」

緑斗が私の腰を固定してるから全然逃げられないし、近いままだけど私はふいっと顔を横に向けた。


「じゃあ、ダメじゃないキスしてもいい?」

また目が泳いでしまったけど、それでも今度はちゃんと私も緑斗のほうを見た。


「いいよ」

私たちの唇がそっと触れあう。


緑斗がここにいてくれること。

触れ合える世界で生きてること。

きみが教えてくれた強さも弱さも忘れずに、同じ歩幅で今日から寄り添っていく。

それがなによりも愛しくて幸せで、その気持ちを噛みしめながら私はまた緑斗を強く抱きしめる。


そしてふたりで、同じ顔をして笑った。



【ガーデンクォーツ END】