「うーん。なんだろ。でも俺は翠ちゃんじゃなきゃダメだったことがたくさんあるんだよね」

「え?」

「翠ちゃんじゃなきゃ、気づけなかったことがたくさん、たくさんあるってこと」

ちょっと、だいぶグッときて涙が溢れそうになってしまった。


それはつまり、緑斗自身も私といた中で気づいたことがあるってこと?

それはすごく嬉しいことだよ。こんな私が誰かになにかを与えてあげることができるなんて。


「あれ?なんか泣いてる?」

「そんなわけないでしょ!」

また強がりの私が出てきて可愛げもなく鼻水を啜った。


「また翠ちゃんと水族館に行きたいなあ」

緑斗は緑斗らしくまたいきなりそんなことを言う。


「はいはい。いつかね」

「話し流さないでよ!今度こそイルカショー見て、カワウソの水中トンネル見るんだからさ」

「わかった、わかった」


こんなに明るくなれたのは全部緑斗のおかげ。

私も緑斗じゃなきゃダメだったことがたくさんあるって、いつかその気持ちを伝えられたらいいな。