『8月29日《月》午前8時20分』




長い夏休みが終わっても、結局美希さんの姿は学校にはなかった。

「美希さん………」

僕のふくらんだ期待が、一気にしぼんだ。美希さんがいつもいた窓の方に視線を向けても、制服を着た男女が楽しそうに話している。

「未来、久しぶり」

「ん?」

後ろから声がすると思って振り向くと、美希さんの幼馴染の裕也がいた。

「教室のドアの前で、つったんなよ。邪魔だぞ」

裕也は軽い口調で僕に言いながら、自分の席に向かう。

「あ、悪い」

僕も、自分の席に向かう。

夏休みに入る前に、席替えを一度した。僕と裕也の席は近いが、美希さんとは離れた。そのせいで、裕也とはよく喋ってしまう。