「蓮人、見て!あそこに亀が顔出してる!」
「え、マジ!?どこ!?……って、うわっ!」
「っ、」
勢いよく蓮人の袖を引っ張りすぎたせいでゆらりと傾いたボート。
何とか蓮人が踏ん張ってくれたからそんなに激しく揺れはしなかったけど、動かないようにピタリと止まったせいで距離が近くなってしまった。
近すぎる距離に二人して固まってしまう。
すぐ目の前にある蓮人の顔。
こんなにも近くで蓮人の顔を見た事がなくて、思わず凝視してしまう。
だから、蓮人の顔が少しずつ近付いて来ている事に全然気付いてなくて。
それに気付いた時にはもう、少し動けばキスしそうな距離に蓮人がいた。
「っ」
避けるなんて選択は私の中にはなかった。ただギュッと強く目を瞑って受け身に徹する。
……って、あれ?
覚悟を決めたのにいつまで経ってもキスされる気配がない。変だなと思ってそっと目を開ければ、さっきと変わらずすぐ目の前に蓮人の顔があった。
目が合った蓮人はニッと意地悪く笑ったかと思うと、私のほっぺたをツンっとつついてくる。
「キス、されると思った?」
「っ」
「彼氏だったら絶対キスしてるけど、俺彼氏じゃないしね。どう?ドキドキした?」
「……う、ん」
ドキドキしたよ!
っていうか、もうドキドキじゃなくてバクバクだよ!


