「……先輩に言われたくないです」




「俺なんかが言っても、心に響かないって?」




「違います。先輩の方が何倍も優しいから、優しい先輩に優しいと言われても嬉しくありません」




誰よりも優しくて、誰よりも自分を捨てていく先輩。


そんな先輩に優しいと言われたって、微塵も嬉しくないです。


私、素直じゃないですから。




「俺優しい?そっかー、俺優しいのか。惚れた?」




そうやってすぐにちゃらける。




「全く。これからも惚れることは一切ございません。家つきましたので、これにて失礼します」




「もう少し話そうとか思わないの!?」




ほんっとうに、先輩を相手にすると疲れる他ない。


自分中心で回ってると思うなよバカ先輩!




「思いません。さぁ、とっとと帰ってください」




「ちぇ。じゃ、明日の朝来るからね」




そうだった……。


私、そんなこと言われてたなぁ。


明日も疲れそう。




「先輩、送ってくれてありがとうございます。気をつけて帰ってください」




「送ったんじゃないよ?一緒に帰ったの」




そうやって、言ってくれるところは素敵なところ。




「そうですね。また明日」




「うん!また明日、一緒に行こうね」




元気にばいばーいと手を振る先輩を、小さく手を振って見送った。


先輩が私をターゲットにした理由のヒントは、私の記憶、かぁ。


どういうことなんだろう……?