「そんな俺たちにくれたのが、このストラップなんだ」




先輩は、愛おしそうに自分のストラップを見つめた。


それにつられてか、私も自分のストラップを優しく撫でた。




──────『あっ、ねぇ、みてみて理沙!』

──────『あら……、それは』

──────『ペアストラップなんだから、やってもいいわよねっ』

──────『そうね。なんか、私たちがキュンキュンしちゃうわね』

──────『ほんと』




「ねぇ、優茉ちゃん。このストラップの秘密、知ってる?」




「秘密……?」




「そう、秘密」




自分のストラップと向き合ってみるが、どこにも秘密というものは見つからない。


……秘密はわからないから、秘密なのか。


じゃあ、普通はわからないところに……?っていっても、ストラップに秘密なんかある?




「分かんないです」




「この、着てる服あるでしょ?これ、裏もあるんだよね」




「う、裏っ?」




「そう、裏。今はこうやって縫われてる……っていっても、母さん達もきっと“こうやってほしい”と思って、簡単にしか縫われていないけど。たまたま、ここの糸がほつれた時に見ちゃったんだよね」




お母さん達の、“こうやってほしい”って何……?


首を九十度曲げると、先輩は、面白そうにケラケラと笑い飛ばした。




「ほんと、俺達がこうなってるって決まってたわけじゃないのにね」




そう言いながら、先輩は自分のくまが着ている服の下の、縫われている部分をぷつりぷつりと解いていった。


服がヒラヒラと靡き、その服を裏返すと……




「これがこのストラップの秘密」




そこには、真っ赤なフェルトでつけられたハートの半分があった。


ハートの半分、ということは。




「優茉ちゃんのうさぎの着てる服も、こうなってると思うよ」