後ろで、えっ?とびっくりした声が聞こえてくるが、それに足を止めることもなく私は歩き続ける。


やばい、やばい。私がこんなに先輩にドキドキするなんて思わなかった。


先輩の前ではクールな私でいたいのに……!




「ちょっと、優茉ちゃん!?なんで逃げるの!」




「せ、先輩が嫌いだからです」




隣に立った先輩に、顔が火照っていることをバレないようにするため顔を右下に逸らしながら話す。


先輩、もう少しだけ左にずれてください。


私、顔とか心臓とか……、そう、二次元世界に住む恋する乙女のようになっているんです。


どうしよう……。私、こんなんじゃ先輩の隣を堂々歩けない。




「き、嫌い?昨日……って言うか、前にも好きって言ってくれたよね?聞き間違い?」




嫌いと好きを聞き間違えるって、どんな都合のいい耳なんだ。


私はちゃんと好きって言ったし、付き合うことになりました。


本当、変な先輩。




「……先輩のバカ」




先輩を見てそう言うと、先輩は目を開いて手で顔を隠した。




「優茉ちゃん……、やばいって」




「なにがやばいんですか」




「優茉ちゃんが可愛すぎて、俺の心臓もたないんだけど」




手をずらして目を見せた先輩に、私の真っ赤な顔を見られ、私はこれ以上ないだろうってくらいにバッと顔を隠した。




「ゆ、優茉ちゃん、顔……」




「うるさいです、黙ってください。……私だって、先輩にドキドキしてるんですから……もう」