俺から言わせて、と言った先輩のことは震えていて、私にも緊張が伝わって変に背筋を伸ばしてしまった。


一歩、一歩、また一歩、近づいてきた先輩。


足を止め、大きく深呼吸した姿を見て、先輩らしいなとクスッと笑った。


青色と朱色の混じった空の下、先輩の頬も空と同じように赤く染まっているように見えて、私の頬も熱をもった。




「優茉ちゃん、いっぱい傷つけてごめん。……幸せにするから、誰よりも幸せにしてみせるから、俺と付き合ってください」




純黒の目が私を捉えて、はにかんだ。


私も笑って、よろしくお願いします、と言った。


言ったが、届いただろうか。


分からない。ただ一つ、今確かにわかることは、


先輩の温もりがここにあるということ。




「先輩の心臓、バクバクしてます」




「言わないで、優茉ちゃん。緊張してんの、俺だって」




バクバクバク、と先輩の心音がそばで聞こえる。


暖かな温もりと、今確かに生きていることを示す心音と、先輩の優しい声。


私は小さな小さな声で、大好き、と言った。


私は先輩がそばにいてくれていたら、それだけで幸せだから。


先輩も、同じように思っていてくれたらいいな――――。