今、先輩、なんて言った……?


頭の中では全く理解出来ていないのに、勝手に体が涙を流す。


頬を伝う涙が、先輩の顔を歪ませた。




「ごめんね。あの時……」




私よりも綺麗なんじゃないかと思ってしまうほど、白い人差し指が私の涙を拭う。


それにビックリしてまた涙がこぼれて、先輩を困らせてしまう。




「俺、優茉ちゃんの本当に好きなんだ。あの時はあんなこと言ってしまったけど、あの時も優茉ちゃんのこと、好きだったんだと思う」




夢なんじゃないか、そう疑ってしまうほど嬉しい言葉が降ってくる。


先輩は歯を見せてはにかんで、私をまっすぐ見つめて、言葉を続けた。




「芹香と付き合ってるけど、芹香に対して愛はないよ。俺の愛は……、いつだって優茉ちゃんにだから」




「先輩……」




じゃあ、なんでセリカさんと付き合ってるんですか?


好きじゃないなら、どうして……。




「変だと思う……よね。俺も最低なヤツだと思う。優茉ちゃんを好きでいながら、芹香と付き合うなんて。でも、俺にはその方法でしか守れないと思ったから」




益々先輩の言っている意味がわからなくなる。


先輩はセリカさんと付き合っているけど、愛はない。


でも、付き合わなくちゃいけない状況があって。


付き合うということが、守ることにつながる、と。


うん、分からない。