「何言ってるの、優茉ちゃんは。愁と付き合ってるんでしょ」




「違います。瀬戸川先輩とは、付き合ってないです」




付き合っているふりをしてくれていたんです、そう言おうとしたのに、勢いよく振り向いてこっちに向かってくる先輩をみたら、言葉を失った。




「嘘、だろ……?」




私の前に立ち、私を見てくる先輩。


揺れるその瞳、なぜ、そんな揺れているんですか……?




「本当です。付き合っているふりをしていたんです」




「は、あ……?」




脱力したように先輩は肩を落とした。


先輩。


それはどういうことですか?いいように捉えていいですか?


先輩は、私と瀬戸川先輩が付き合っていないと知れて、良かったと思っていると捉えていいですか。


こんなことを思う私は、馬鹿ですか……?




「先輩……?」




「何で、そんなことしてたんだよ……」




「確か、瀬戸川先輩は先輩の気持ちを誘き出すさくせんだとか言ってましたね」




ばか愁、先輩は壁を軽く拳で殴った。


私はその様子をジーッと見ていると、先輩が私を見て、顔を伏せた。




「まんまとハメられちゃった」




やられたなぁ、と目尻を下げる先輩は私の大好きな先輩。


久しぶりにそんな和らいだ表情を見た。




「はめられたって……?」




「俺の気持ち、バレてるんじゃない?」




しゃがんだ先輩は、私の顔をしたから覗き込んだ。


その丸い瞳が、私の瞳を捉えて離さない。


私は、フルフルと首をふると、先輩はクシャッと笑った。




「俺ね、優茉ちゃんのこと好きだよ」