私の人生は、いつも空回りばかりだ。

どこへ向かっても不正解ばかりで、良かったと思えた選択肢は一つもない。
自分の性格から考えてみて、なんでも思いつきでしか行動していないせいだからだと、それもわかっている。

なのに、同じことを繰り返してしまうのは何故だろう。考えても考えても分からない答えは、心の奥底へ沈んで、いつものように消えた。






真夏の痛いくらいに熱い太陽が、教室の窓ガラス越しに私の体を照りつける。ジリジリとした熱が地肌に触れて、焼け焦げるような感覚を覚える。その太陽が鬱陶しくて、私は堪らず遮光カーテンを掴み、半ば投げやりにそのレールに付いたフックを走らせた。


教室の左側、窓際の一番後ろの席。
私は日直の仕事を早く終わらせようと、せかせかと学級日誌にペンを走らせていた。
その向かいで、同じ日直である水谷葵が、つまらなそうな目でその光景をじぃっと見つめている。


「咲々、俺にも仕事させてよ」


膨れっ面で、葵が言った。


「やだよ。葵じゃあどうせ適当にしかならないもん。怒られるの誰だと思ってんの」


「確かに」


「納得するなっ」


他愛もない会話を交わす。
誰もいない教室に響き合う二つの声が、なんだか心地よかった。


私と葵は、小学生からの幼なじみだ。昔から驚く程仲が良く、近所のおばさんからは「微笑ましいわ」とよく茶化された。
傍から見れば、ただの彼氏と彼女の関係だと、たまにクラスメイトから誤解されることもある。また、葵の方はルックスが良いので、他の女子に疎まれることも少なくはない。
少し茶色がかったストレートの綺麗な髪と、切れ長の目。それは確かに、人を惹きつけるものがあると私は思った。


「なぁ、この後どっか寄ってかねぇ?腹減った」


「えー、今日お金持ってきてないよ」


「奢ってやるから」


「仕方ないなぁ」と私は続けた。
それを聞いて、「よっしゃ」と葵は嬉しそうにガッツポーズを見せる。