里子が八重歯を覗かせて笑いながらそう言った。


「やっぱり、そういう意味なんだよね?」


「だって、野菜にも影響が出るし、漁には出られないもんね」


ようやく丘の上に校舎が見えて来た。


雨のせいで普段よりも濃い灰色に見え、どこか陰気なイメージだ。


「おまけに髪の毛がまとまらねぇしなぁ」


後ろからそんな声が聞こえてきて、あたしと里子は同時に振り向いた。


そこにいたのは中本大和(ナカモト ヤマト)だった。


ゆるい天然パーマがまとまらず、うねっている。


大和も里子も同じ1年A組だった。


というか、高校は1学年1クラスずつしかない。


それなのに学年ごとに階数が別れているのだ。


昔は近隣の島からここの高校に通う生徒もいたのだけれど、本土の海沿いに学校が建てられてからは一気に少なくなってしまい、やがて毎日の通学船も廃止されてしまった。