あれは幻覚なんかじゃない。


あんなにリアルな幻覚なんて、あり得ない。


だけど、今あたしの間の前に先生がいることも事実だった。


先生の顔は崩れていないし、怪我だってしていない。


「随分混乱してるようだな。順番に説明してあげよう」


先生はそう言うと、ベッドの隣に椅子を移動して座った。


先生の血の匂いが思い出されて吐き気が込み上げて来る。


「昔、この島では工業廃水を垂れ流しにしていたと、知っているかい?」


先生の言葉にあたしは頷いた。


汚水によって病気になった人々がまだ森の中の病院にいるという噂も知っている。


「この島では今でも数年の1度の割合でその影響が出ているんだ」


あたしは先生の言葉に耳を傾けた。


隣のベッドでは大和が規則正しく呼吸をしている。