「だってそうするしかないじゃん!! そんなこと言われたら、付き合うしかないじゃん!!」


梨央が次から次へと涙をこぼして叫んだ。


「あたしにとって悠と付き合う事は贖罪だったんだよ。悠に暴力を振るわれている時だけ、救われていたんだよ……」


そんなの、悲しすぎる。


そう思ったけれど、あたしは何も言えなかった。


梨央は2年生の頃の出来事をずっと悔やみ続けてきて、悠という逃げ道をようやく見つけていたのだ。


第三者から見れば到底理解できないことでも、梨央にとってはとても大きな出来事だったに違いない。


梨央が手に力を込めた。


「やめてくれ!!」


裕司が叫んだ瞬間、再び目の前が真っ赤に染まっていた。


赤に染まる世界で、梨央の体がゆっくりと倒れて行くのを、あたしは立ち尽くしたまま見ていたのだった。