昔の記憶はまだボヤけていて、ハッキリしない。


ツグミ君の顔もまだ思い出せていない状態だった。


「あの日の夜。ツグミ君は死んだんだよ?」


そう言う梨央の声は今までになく穏やかだった。


涙を流しながらも、梨央はほほ笑んでいる。


「死んだ……?」


あたしは梨央へ聞き返した。


「そうだよ。あの日、用水路に落ちて死んだの」


あたしは和を見た。


大和は小さく頷く。


「あたしがあんなことを言わなければツグミ君は死ななかったって、ずっと思ってた……。


だから悠に告白された時も、本当は断ろうと思ってた。でもね、兄弟そろって傷るける気かって言われちゃったんだ……」


「それで悠と付き合い始めたのか」


裕司がため息と共にそう言った。