裕司は遠まわしにだけど梨央を助けていたつもりだった。


だけど、それすら利用されていただけだったのだ。


「あたしは……あたしは……裕司に殺されるくらいなら、自分で死ぬ」


梨央はそう言い、ポケットからカッターナイフを取り出した。


「なにする気!?」


あたしは思わず叫んでいた。


梨央は自分の首にカッターナイフを押し当てている。


「冗談だろ、梨央……」


裕司が手を伸ばすが、梨央はその手を取ろうとはしなかった。


「あたしは悠のことが好きだった。悠のことしか、好きじゃなかった」


「なんで!? なんであんな奴のことばっかり!」


裕司が叫ぶ。


あたしも裕司と同じ気持ちだった。


梨央は悠からの暴力に怯えていたはずだ。