だけど、1時間後にはまた投票が始まるのだ。


のんびりしている暇はなかった。


「大和」


隣で茫然としている大和に声をかけると、大和は視線をこちらへ向けた。


何度か瞬きをした後、ようやく我に返ったように表情をゆがめた。


混乱する大和をどうにかなだめて、あたしたちは2人で教室を出た。


近くの水道でベタついた髪の毛を洗うと、真っ赤な血が流れおちて行き、真奈美が死んだことを知らしめていた。


体操着に着替えをすると、ようやく気持ちが楽になった。


目の前が血で染まった光景は脳裏に焼き付いているけれど、体が綺麗になることで気持ちも軽くなる。


教室に戻ったあたしたちはまた教室の後方に座り込んだ。


できるだけ近くにいたかった。


「優衣、覚えてるか?」


「なに?」


「幼稚園の運動会の頃の話」


大和の言葉にあたしは瞬きを繰り返した。