さっきのパティスリーの光景を思い出すだけで気持ちが落ち着かなくなる。
「名前は?……って、自分から名乗れって感じか」
無邪気に見せた笑顔につい釘付けになってしまった。
「俺は煌(こう)。今はカメラが恋人とでも言っとこうかな」
煌の自己紹介にクスッと笑いが溢れてしまった。
「私は奈緒。今はスイーツに夢中だけど、彼氏はいます」
「だから赤ちゃんね。訳ありだったらどうしようかと思ったよ」
ははっ、と笑って流してる煌とは真逆で私は現実に戻された感覚に包まれた。
「あ、本当に訳あり?彼氏が反対してるとか?」
「_________………」
「嫌なら無理に話すことないよ?俺部外者だし。まぁ、第三者だから話せることもあるけどね」
この人ならわたしの悩みを聞いてくれる。
会って10分しか経ってないのに何故かそう思った。
そう思ってから喋り出すのに勇気などいらなかった。

