40分近く電車に揺られて着いた東駅には既に航がいた。
航の3度目の私服姿。

うん、かっこよい。

ワックス取れてるってことはお風呂入ったのかな。


「お疲れ様。迎えに行けなくてごめんね」

開口一番に相手を気遣えるその心、私にください。

「お疲れ様です。全然!むしろおこがましいこと言ってごめんなさい」

「結にしては大胆発言でびっくりしたよ」

大胆発言?

って。

「いや!違いますよ!?そんなつもりじゃ!!」

「ふふ…分かってるよ。なんかあったんでしょ?俺が全部受け止めるから全部話してね」


もう!
冗談でもそんなこと言わないでよね!


「てか、結、敬語。電話の時から8割敬語!」

「あ…ごめん…ついつい…」

敬語に関してやたら厳しい天下の航様。
そんなに嫌なのかな?

まだ慣れない…。


「行こ」


手を差し出されて特に何も思うことなく繋いだけど、1秒でハッとした。

「手!?」

振り払うまではいかなくてよかったけど、割と大きな声が出てしまった。

「手。繋ぎたい」

でもあまり気にした様子のない航は繋いだ手に力を込めた。

なんてお美しい横顔。

「わ、私も……」

そんなやり取りをしたせいで握った手を意識してしまって顔が火照る。

心臓もドキドキしちゃうし、恥ずかしい…。


「結、ご飯食べた?」

「あ、食べてないから、コンビニ寄ってもいい?」

「簡単なものでよければ作らせて」


確かに航は料理が好きだと言っていたがしかし、、仕事終わりでクタクタのはず…。
でも、航の手料理食べたい…。

どうしよう…。





「わ、わわわ、私も手伝います!」


「敬語だから俺が作るー」

イタズラが成功した子どものように笑う航は楽しそうだ。

「じゃあ…お言葉に甘えて…」