顔をサランガルガへ向けたままハデスの姿を探す。
さっきまで牢獄の屋根に寝そべっていたのに…。
見える範囲で探すが居ない。
…殺される!
青年は青ざめた顔で森の更に奥へ逃げようと振り返る。
「何処へ行く。」
振り返った目先にハデスが立っていた。
早く逃げないと殺される。
そんな事は百も承知。
青年の足は恐怖のあまりすくんでしまったのだ。
一歩一歩、ゆっくりと歩み寄ってくる。
青年は腰を抜かしてしまい、その場に座って覚悟を決めた。
目の前に来たハデスはしゃがみ、青年の目をみて聞く。
「最後に言い残す事はあるか?」
と。
青年は口を大きくあけ、涙と鼻水を垂れ流し、パニック状態に陥っている。
当然、ハデスの質問に答えられるはずがなかった。
ハデスは彼の口に手を突っ込み、青年がもたれかかった木に指先が突き刺さった。

犠牲者、十八人。
ハンター、十六人。
残り、十九人。