「ああ、日菜子の匂い」


倫太郎が私の首筋に鼻を当てている。


私は恐怖で動くことができずにいた。


「男の部屋にひとりで来たってことは……わかってんだろ?」


耳元で囁かれた時、涙が溢れ出た。


「ヒック……ンック…」


倫太郎が驚いた顔で私を見る。



「日菜子?泣いて…」



「さ、サイテーだよ…どうして…こういうことできるの?」



昔の倫太郎の笑顔や思い出が、バーっと頭の中を走馬灯のように駆け巡り、胸がぎゅーっと切なくなった。



もう、あの頃みたいには戻れないのだろうか。