涙が出ちゃうよ、先生。



「ありがとう、先生」



「どういたしまして」



熱の伝わったカップを掴み、フーフーと冷ましてから一口飲んだ。



「……先生」



「次は何ですか?」



「先生、私、明日引っ越すんです。ここの学校とサヨナラなんです。……大好きな先生ともお別れなんです」



先生からは返事はこない。でも、耳を傾けてくれていることは、下を向いていても伝わってきた。



「そこで一つお願いがあるんです。私、このお願いを叶えてもらわないと、この学校から……この保健室から離れられません」



「先生に、ですか?」



「はい。大好きな先生じゃないと叶えられないんです」



「何ですか、それは?」



震える唇で、必死に次の言葉を紡ぐ。



「先生に……、一人の人として、私の下の名前を呼んでほしいんです」