【過去】
外に出ると周りは崩れたビルがあちこちにある廃墟だった。地図で確認すると丁度真ん中に赤い印がポツンとある。そして画面の右下にはコンパスだろうか、針が左を向いていた。
(さ~てと、どうしようかな。どこに行こうか。)
スマホを触って画面を動かすが、反応がない。
(動かせないのか…まぁいいや、とりあえず、ここから北に行くと大きい池があってその奥には廃れた街?で、西には山を挟んで学校か…東にはまた山を挟んで寺と灯台、最後に南には墓地かこれ…そんで浜辺か。)
ふと、ポケットの中からあの薄汚い手袋を取り出した。
(まさかと思うがこれが…武器?いやいや…けど相手は殺人鬼だ武器はくれないと酷いよな。とすると、やっぱりこれが武器になるのか…まぁ護身用に着けとくか。)
グッと引っ張り両手に着けた。手を開いたり閉じたりしても破れない、ぴったり合う。
(とりあえず…灯台に向かうか、それ以外は誰か潜んでいそうだもんな。そうするとここから東だな、よし。)
スマホをポケットに戻すと灯台に向かって歩き出した。
しばらく歩くと森に入った、長い間人が入った跡はなく木々は伸びたい方へ草も太陽向かって育っていた。小枝と草を左右にかき分けて進んだ。
(なんだか懐かしいな。餓鬼の頃はよく友達と虫を捕りに森に来たっけ。この頃はまだ親父は工事現場で働いていたっけか…)


小さい頃から家は貧乏だった。母さんが癌になりその治療費でお金がほとんど持ってかれたからだ。そして挙げ句の果てに親父はリストラされてしまった。しかし親父は母のために日雇いの工事現場で働きコツコツお金を貯めていた。俺はほとんど家に家に居るのはつまらなかったから平日はお金がなく学校に行けない近所の友達と遊んだり、母に会いに行ったりした。休日はたまに親父が昔買ってくれたサッカーボールで遊んでくれたり少しは勉強を教えてくれた。別に嫌な生活ではなかった、むしろこっちの方が楽しかった。
でもこんな生活は長くは続かなかった。母が急死した。原因はわからなかった。医師はまだ3年以上は生きると言っていたのに。この日から親父は家に毎日帰らなくなった。毎日ギャンブルに入り浸り、酒を飲み、負けると俺に八つ当たりした。この時親父は母のガン、リストラ、そして母の死と辛いことがあり過ぎた。いつしか親父は家に帰らなくなった。家には借金の催促で毎日ヤクザが来た。窓を割られたりして家はもう廃墟同然だった。俺は家を捨てて刺激を求めて夜の町に繰り出した。喧嘩をしたり、盗んだバイクを乗り回した。ギャンブルもした。しかし、どんなにスリルを味わっても、全てを失っても心には『不安』だけが残った。今後どういう風に生きていけばいいのかという『不安』に…


そして気がつくと殺人鬼まみれの島に放り込まれ、灯台に向かっていた。
(今振り返るとクソみたいな人生だな…誰も悪くない、親父も母さんも誰も責めることのできない人生…そして残ったのが『不安』。皮肉もいい所だぜ、全くよ。)
森を抜けて寺の横を通り過ぎまた森を抜けて灯台についた。灯台は海風が吹き荒れコンクリートで固めた地面もひびがあちらこちらにはいり灯台は苔で覆われていた。
(灯台についたが…どうしたもんか、武器になる物を探すか。)
周りを見渡し、堤防の方に歩いて行った。堤防につくと海風がより生暖かく感じた。
(懐かしいな、餓鬼の頃によくあいつと石投げして遊んだな…おっ!丁度落ちてやがる。)
落ちていた石を拾い、海に投げつけるた。すると後ろから葉っぱが擦れた音がすると
「動くな!動いたら撃つ!」
後ろから女性の声が飛んできた。
(うっそだろ…やらかしたな。思い出に浸りすぎた、まさか会うとは…)
「そこに伏せろ!」
(殺人鬼に…!)

『生存者残り10人』