ルキが負けを認めたことによって、ライザの猛攻の手がようやく止められた。



「はぁーっ……‼どんなもんだ、クソ転校生っ!俺の実力を思い知ったか!」



ライザは勝利の雄叫びをあげながら、膝から崩れ落ちるようにしてその場に座り込み、仰向けに身体を倒した。

もう自力で立ち上がる余力さえないライザの周りに、数人の男子たちが「さすがだな」や「おめでとう」なんて言いながら走り寄って行く。



ルキがケガすることなく終わって良かった。

ライザが勝ったっていう結果はちょっと……いや、かなり不満だけれど。



「ルキっ!」



ルキの元へかけよって「お疲れ様」と声をかけようと思ったけど、足を一歩踏み出したところでやっぱり止めておいた。



ルキが微笑みを浮かべながら、倒れ込むライザとその周りにいる男子たちの元へゆっくりと歩き出したからだ。



「ライザくん、本当に君ってすごい魔法使いだね。間違いなく、君が1番だよ。今日はお疲れ様」

「……誰がお前の手なんか借りるかよ」



ライザは差し出されたルキの手を掴むことはなく、ふらふらしながらもなんとか立ち上がった。

ルキはトールボットやローリーに支えられるライザにくるりと背を向け、「じゃあまた月曜日に」と手を振りながら出入り口に歩きはじめた。

そしてサビーナが出入り口に施した魔法の錠前を、ほんのひと握りしただけであっさりと壊し、颯爽と出て行ってしまった。



「あーあ、残念だったねルキくん。もしかしたらライザに勝てるかなって思ったのにさ」

「勝ったのはライザだけど、私の中ではルキくんが1番だから」



何やらエイミーとカーラが話している中で、私は「じゃあ今日はもう帰るね!」と、大盛り上がりのクラスメイトたちを残し、ひとりルキの後を追いかけた。