「同い年?」
「うん、僕も17歳」
「年上に見えたな…」
私が言うと彼は少しすねた顔をして私を見上げた。
「え~。老けてるってこと?」
「ち、違うよ!大人っぽいってこと!」
慌てて言い換える。
「はは、だといいけど」
本当に優しく笑う人だ。
「名前は?」
彼が私に聞く。
「永峰…沙和」
「じゃあ“さよ”だね」
そう呼ばれた自分の名前は新しいもののようで、なんだか新鮮だった。
「僕は御影北斗。よろしくね、さよ」
「う、うん…」
御影くんはそう笑うと立ち上がった。そして大窓の外を眺めた。
「さよ、病室はどこらへん?こんな時間にここにいるんだから入院してるでしょ?」
「あ、うん。すぐそこの606号室だよ」
そう言って私はその方向を指さした。
「お、近いね」
「御影くんは?」
「僕は303。階が違うね」
「3階から来てるの?」
「3階だと全然景色が見えないんだ」
「もっと上もあるけど…」
「6階のここが一番好きなんだよ」
御影くんは外を見ながら笑った。

しばらく景色を見たり話したりして気がついたら深夜の1時。
「わ、もうこんな時間だね。長話してごめんね、もう戻ろうか」
御影くんがそう言って病室の方を向く。あっという間に時間が過ぎていた。御影くんと話すのは楽しい。
「御影くん…明日もここに来る…?」
私が恐る恐る聞く。
すると御影くんは私へ振り向いて微笑んだ。
「さよが来るなら僕も来るよ」
一瞬ドキッとした。なぜか鼓動が速くなり、顔が熱い。私はそれが気づかれないように、下を向いた。
「じゃあおやすみ、さよ」
御影くんがそう言って歩き出す。
「おやすみ」
私も車椅子を進めた。
こうして私たちは病室へ戻った。