学校に転入してから1ヶ月経った頃だった。夕方に家に帰って来ると、お父さんに呼ばれてアノ部屋に行った。今度こそ怒られるのではないかと、内心ドキドキしていたが、お父さんから発せられた言葉は意外な言葉だった。
「君を養子に迎えたいという人がいるんだ。」
「私を?!」
「あぁ。君のことを知ってる人をネットで探していた時期に、時音のことを見て養子に迎えたいと思ったらしい。時音には合った事も無いが、息子さんが記憶喪失だったらしく時音の役に立てたらと連絡をくれたんだ。」

私以外にも、記憶喪失だった人が居るんだ。

そう思えるだけで、安心感が持てた。だけど、
「明日、挨拶に来られるから学校は休みなさい。」
「うん、分かったよ。」
部屋から出ると、ため息が出た。
時音は、複雑な気持ちだったからだ。

雪斗という家族がそばに居るのに、離れ離れにならないといけないんだ。

まるで、肝試しに行った時のゾワゾワとした気持ち悪さが時音を襲っていた。