時音がアメリカに行って1日がたった日に、母さんと父さんに呼ばれた。
「本社からの引き抜きがあって、N県に行くことになった。だから、皆で行こうと思うんだが、いいか?」
今までは時音が居たが、今は居ない。時音が居たら“僕は残る”と言ったが、時音が居ない今は残る意味も無い。
「いいよ。僕も行く。」
そう言って通う事になった高校は叶高校。やけに新しい高校で、編入テストを受けると特別クラスに入れと言われた。
 時音がいない日々、それは寂しくて、苦しい日々だ。今まで、時音と離ればなれになるなんて思ってもいなかった。もっと時音に触れていたかった。もっと声を聞いていたかった。もっと近くにいたかった。でも、僕にはどうすることも出来ない。時音がアメリカに行くと言ったのも、すべてあのせいだ。僕がもっと守っていれば良かった。僕がもっとかばってあげれば良かった。もっとアイツらに…。
 後悔ばかりが頭を満たす。電話も全く通じない。既読もつかない。やっぱり時音は、こっちの思い出全てを捨てたのだろう。
 僕は心にこびりついた苦しみをぬぐえぬまま、新しく入るクラスで挨拶をしている。
「転校して来た小林 秋です。よろしくお願いします。」
「じゃあ、1番右の奥の席に座って!」
クラスの人数は18人だった。メガネの割合がやけに多い。
「今日は、もう1人転校生がいるから。入って。」
時音なわけないよなぁ。と思いながら外を眺める。ほんと、時音ならいいのに。
「白波 時音です。よろしくお願いします!」
「可愛い〜」
「俺タイプだわー!」
まさかと思いながら見ると、時音だった。
「なん、で?」
時音がアメリカに引っ越してから、確かに連絡は無かった。だけど、まさか…。
「時音さんは、飛行機事故に合って記憶がありません。サポートしてあげて下さい。じゃあ、小林くんの隣に座って。これでHRはおわり!」