部屋へ入ると、時音を彩さんと美花、梨々花が様子を見ていた。
「今はまだ目を開けてない。どんな話しだったの?」
彩さんは、とても心配そうな顔で話しかけてきた。
「鈴ちゃんは、僕のお姉ちゃんだと思うからこれからはお姉ちゃんとして接しなさいって。」
「そっか。名前は?」
「時音だよ。」
彩さんは頷くと
「お昼ご飯の用意してくるから。」
と言って出て行った。

お昼ご飯の時間になっても、時音は目を開けなかった。
「食事中悪いんだが、皆に話がある。」
静まり返って、お昼ご飯を食べている時だった。
「知っている人も居るかも知れないが、鈴音が倒れた。それは、過去のことを思い出そうとすると起きる発作の様なものだ。命に触りはないから安心してくれ。今回は、雪斗が“あなたはお姉ちゃんだ”と言ったことで起きたんだが、鈴音は雪斗の姉で間違いないだろう。そこで、鈴音を正しい名前で呼んであげたいと思った。記憶が戻るきっかけになるかもしれない。鈴音の正しい名前は“時音”という。目が覚めたら、時音と呼んであげなさい。これで報告終わりだ!さぁ、早く食べよう!」
お父さんの言葉で、その場の空気が和んだように雪斗は思った。