水から出ようと体を起こすが、二人の力に勝つことはできない。苦しかった。何もかも。全て忘れたい。そう思った。

目を覚ますと、そこは病室だった。
「すばる?大丈夫?」
顔を覗いてくる女は、心配そうな顔だった。
「だ、れ?」
俺がその言葉を発した瞬間、女は泣き崩れた。後に、女が自分の母親だったと知った。

 俺が記憶喪失になってから、家庭は崩壊した。両親は毎日喧嘩が絶えなくなり、俺は毎日責められた。勉強も家族も友達も、生活全てを忘れていたから。

そして、見捨てられた。