桜の花弁がひらりと舞う。見上げると、桜が咲き乱れていた。その時、胸に苦いものが押し寄せてきた。

 ジリジリと太陽に肌を焼かれる季節。俺は徐々に近づく水に合わせ、スッと息を止める。そのとたん全身を、包み込む水と気泡。気持ちいい。だから俺は、水泳を続けている。水と友達になれ。先生に言われた言葉だ。俺はそれを忠実に守って、練習を続けていた。
「ふあ!」
 水からでて、大きく息を吸った。

「またアイツ1位だぜ!」
「凄い!」
「かっこよくない?」
「私もカッコいいと思う!」
みんな俺をほめてくれるし、カッコいいと言ってくれる。これで水泳仲間が増えれば楽しいだろうな。そう思うような幸せな日々だった。
「よくやったね!勉強もスポーツもできるなんて!自慢の息子だわ!!」
それでも、何より嬉しかったのはお母さんのこの言葉だった。