朝起きると、朝ごはんのいい匂いが私を包んだ。リビングへ行くと、愛衣さんに晃さん、すばるくんがいる。いつもの様子なのに、この日の私はとても幸せな気分だ。
「おはよう！」
「おはよう、時音。」
皆に挨拶をして席につくと、愛衣さん特製、目玉焼きプレートが目の前に並ぶ。ひとたび口にすれば愛衣さんの優しさが私を包む。ご飯も食べ終え、食器をキッチンに運ぶ。一足先に食べ終えていた愛衣さんが、受け取ってくれた。
「今日は、頑張ってね！」
「うん！」
短い会話の後、私は自分の部屋に行き、できるだけ地味な服を選んで着た。そして、洗面所に行き、顔を洗い歯磨きをする。メイクはしない。そう決めている。近くの棚にあるマスクをして、部屋に戻りキャップを被った。また、リビングに行って「いってきます！」と声をかけた。
外に出ると、雪の香りが空気に混じっているのを感じた。長い間、仕事に追われそんな事に気が回らなかったのだが、今日は少し心の余裕があるようだった。
「白波さん！こちらです！」