時音はその日の朝、スッキリと目覚めた。
身だしなみをしっかりとチェックしてから、玄関の扉を開ける。
「遅い。早く行くぞ。」
外に出ると、もうすばるくんが待っていた。
「ごめんね。これで良かったのかなって、そう思ったらドアを開けるのに時間かかったんだよね。」
すばるくんは時音の話を聞いていたのか、聞いていなかったのか、話の途中で歩き始めた。時音は、話すのを諦め無言ですばるくんに着いて行く。
今日は、あの金曜日だ。
事務所に行くと決めてから、時音はこの日がくるのを恨めしく思っていた。一度は決めた事でも、この選択をした事に後悔もしていた。だが、時音の為に今日から再開するはずの部活を休み、事務所までの道案内をしてくれるすばるくんの事を考えると、今更嫌だとは言えなかった。中村さんに会って以来、災厄ばかりが舞い込んでいた。あの日帰ってから、愛衣さんにこっぴどく嫌味を言われ、次の日に寒い中神社にお参りへ行き、遠いスーパーへ歩いて買い物に行かされた。はぁ、と時音は溜息をついた。