雪がチラチラと降り始めた12月の中頃。時音は、いつものように晩ごはんを作っていた。
「今日は、鶏鍋だから少し時間あるなぁ。」
準備を終えると、ソファーに座り込みうたた寝をしてしまった。今まで気を抜く事なく働き詰めだった時音は、ものすごく疲れていたのだ。
しばらく経った時、
「時音!!!!!!起きろ!!!!!!!!メシはどうした!!!」
時音は、物凄く大きな声で目覚めた。その声の持ち主がまさかお父さんだとは思わなかったが…。
「ごめん!もう用意は出来てるの!ちょっと待って!」
時音は、目の前にいる目を吊り上げたお父さんの横をすり抜けようとしたその時。お腹に鈍い痛みを感じた。
「うっ。」
「ルールが守れない奴には、お仕置きをしないとなぁ。」
お父さんはそう言うと、時音に次々と蹴りを入れていく。
「や、やめて…。」
必死に出す声も、最後の方は声が出なかった。体中の痛みと、お父さんに裏切られたという事実が、時音の心を傷つけた。体中が痛いはずなのに衝撃的過ぎて、涙も出なかった。
「父さん!何やってんだよ!」
その時聞こえた雪斗の声は、時音の心に温もりを与える。
「姉ちゃん!大丈夫?!」